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命ってなんだろう。なぜ、自分は生きているのだろう。ときに、命の尊さに気づくのは、それを失ってから、ということがあります。病気、事故、災害、犯罪、自死。さまざまな原因で、命は失われていきます。残念ながら、誰も永遠に生き続けることはできません。ひとつの命が失われると、遺された人々に悲しみの感情(grief/グリーフ)が湧いてきます。心の傷が深ければ深いほど、悲しみも深くなります。 病院では、多くの人が亡くなります。日本の現状では、在宅死は5人に1人程度で、他の方々は病院などの施設で亡くなります。多くの方々が大切な人を失って、悲しみの感情を抱えたまま、病院を後にします。近年になって、医療の現場で遺族の方々の心や感情についてケアすることが大切であると言われ始めています。 大切な人を亡くされた方々がつらい悲しみを抱えておられるのを見たら、何か声をかけてあげて慰めてあげたい。人は、そう思うのが自然だと思います。一瞬そう思っても、何もせずにその場を立ち去る人。何かしら声をかけてあげる人。悲しみも人それぞれですが、そのような人を前にしての行動も、人それぞれです。 仙台グリーフケア研究会は、医療現場などで、大切な人を亡くしてつらい思いを抱えている人々を目の当たりにして、何か、して差し上げることはないものか、と、集まってきた人々からなるボランティアの会です。中には、自分も大切な人を亡くしたつらい経験を持っている人もいます。 日本の自殺者数が年間3万人を超える事態が12年連続しています。世界的な経済、金融の危機を反映して、その数は一向に減る兆しが見られません。緊急事態が12年以上継続しています。国は、自殺対策基本法、自殺総合対策大綱に基づいて自殺対策を行なっておりますが、社会のさまざまな要因が絡む自殺の問題は、ほんとうに解決の方向に向かっているのかと、疑いたくなるような状況です。一方、国を挙げて自殺対策に取り組んで、成果を上げている実例が、世界にはあります。自殺に追い込まれないで済む、安心して暮らせる社会の実現が求められています。多くの人がつながっているいろいろなネットワークが存在し、そのネットワークがいろいろな角度から救いの手を差し伸べている。自殺を考えている当事者の方々にネットワークがあるんだと伝えることが、自殺の泥沼から人々を救うための大切なキーポイントであると、私たちは考えています。死ぬことしか見えていないつらい状況にある人が「つながりを信じて」、ネットワークのどこかをつかんでもらいたい。これが私たちの思いです。 私たちは、2005年から自殺対策の活動として、啓発事業であるシンポジウムの企画、遺族の方々が参加できるわかちあいの会、ファシリテーター養成講座の開催など、さまざまな取り組みを行っております。その大きな目標は、自ら死を選択するという悲しい出来事・自殺を少しでも減らすことにあります。 2009年からは、わかちあいにご参加いただく方を自死遺族に限らず、原因を問わず大切な人を亡くされた経験をお持ちの方々にご参加いただくわかちあいの会を行っております。 大切な人を亡くしてつらい思いを抱えている人々を目の当たりにして、何かして差し上げることはないものか。もしかしたら、余計なことをしないのが良いのかもしれません。しかし、何もしないのは、その人を無視してしまうことと同じになってしまう場合があります。何もしなくても、傍に寄り添っている。お話を聴いている。つらい悲しみを抱えた人と時間と場所を共有することが、私たちにはできるはずです。 仙台グリーフケア研究会 代表 滑川明男 ◎プロフィール/仙台市立病院循環器科医師。2005年より仙台市立病院内外のスタッフとともに「仙台グリーフケア研究会」を設立し、自死遺族のための「わかちあいの会」を開催するなど、グリーフケア活動、自殺予防の取り組みを始める。 |